目を向ける、そして寄り添い歩く~ボロフェスタ2019開催に向けて

ボロフェスタ2019、開催に向けて

でんぱ組.incの古川未鈴ちゃんが結婚発表をした。僕が今こうしてボロフェスタに関わっているのも、きっかけはアイドルだった。5年以上前、なんとなく深夜に何かを探してチャンネルを回していると、決して華やかとは言えない会議室で、女性スタッフに説教される女性6人を目にした。それが衝撃的で、その時の映像を今でも覚えている。

それが僕のでんぱ組.incとの出会いだった。

『W.W.D』(※1)で、彼女たちが、がむしゃらに”人生”を歩む姿を知った。

アイドルとして10年走り続けた未鈴ちゃんが、今度は結婚という”人生”の大きな1歩を歩み出すこと、僕はストレートにカッコいいと思った。そんなでんぱ組が前回出演してくれた2013年は、ボロフェスタの歴史の中でも特に印象深い年だったと、その時はまだスタッフとして参加していなかった自分も外から見ていて思う。

当時の映像や、

https://news.yahoo.co.jp/byline/munekataakimasa/20131202-00030264/

ライターの宗像明将さんが書いた当時のレポ―トは、今年でスタッフ歴4年を迎える僕も憧れる瞬間を鮮明に残している。

このレポートでは、何故、今でもBiSやWACK(※2)のグループが宮城県の女川町でライヴを続けているのかという事についても触れられている。そしてボロフェスタがそのきっかけの一部である事も。そんな事実も妙に腑に落ちるくらい、当時の映像、記事からは一言では表せないエネルギーを感じる。

そして、そんな2010年代の地下アイドル・ムーヴメントを象徴する2組が、でんぱ組は卒業、加入、メンバーの結婚を経て、BiSは2度の解散を経て、2010年代最後の年に共演する。この流れは決して狙ったわけでもないし、2013年をもう一度やり直したいわけでもない。今みんなに見てほしいものを伝えたいと思った結果なのだ。

今年のラインナップを自分で見返してみても、出演者の皆さんのご協力のおかげで今本当に面白いと思うものを詰め込めたと思う。

一日目の25日も、今まさに全国各地のサーキットイベントやフェスで引っ張りだこのDENIMS、No Buses、そしてTENDOUJI、今年に入ってうなぎ上りに人気を獲得していった羊文学。
そして、ライヴ経験はまだ浅いながらも、昨年から様々なプレイリストで名前が並び、初の恵比寿リキッドルーム・ワンマンも成功に収め、まるで今のサブスク・プレイリスト文化を象徴するようなGhost like girlfriendが出演する。メロディックでありながらも小気味のいいリズムでクラフト・ヒップホップといわれ注目を集めるMomも、インターネットのレスポンスの早さが、がっちりはまったいい例なのではないかと思う。

そして、今熱い視線を送らざるを得ないのが、君島大空だろう。

今、シンガーソングライター・シーンが熱い。
昨年、テレビ番組で取り上げられ、そこから、ゲスの極み乙女。の川谷絵音や、くるりの岸田繁から絶賛されたことによって、瞬く間に注目を集めていった崎山蒼志。そんな崎山蒼志を尊敬しながらも、意識し続ける同じ静岡の高校生のトラックメーカー諭吉佳作/men(※3)など、若い世代のバイタリティは確実に見逃せないものになっている。
そんなシーンの中で、崎山蒼志が尊敬してやまないとコメントするのが君島大空だ。そうして、一緒に演奏したり、二人で共作した楽曲「潜水」も今年9月にリリースされた。君島大空自身は今年初めてフィジカルで音源をリリースしたのだが、その音源は瞬く間に広がり、その実力を世間に知ら締めたのだ。

また、「メッチャドスエダモンデ」というイベントを同世代のシンガーソングライター、坂口有望、崎山蒼志と共に開催しているのが竹内アンナだ。そのキュートな雰囲気に鋭いギターを鳴らす彼女も若手シンガーソングライターの中で見逃す訳にはいかない存在だ。

また、こういった若い世代がいろいろな場所で同時多発的に活発になっている。昨年度まで高校生だったDJ・トラックメーカーYackleは高校生でありながらも”超合法”というイベントをオーガナイズし、今年の夏は東京、大阪、沖縄、そして韓国でも開催する大きなイベントになった。その”超合法”の東京編では前売りの時点で400人から予約が入り、ラインナップの中心にいたのは高校生ラッパーさなりや、諭吉佳作/men、2000年生まれのシンガー吉田凛音なのだ。もっといえば、僕たちの周りの関西ハードコア・パンク・シーンで話題のブッカーは女子高生だったりもする。
これは余談的な話だが、今世界の注目の的である”気候のためのストライキ”を行ったグレタ・トゥーンベリ(※4)も16才だ。

この”気候のためのストライキ”は今世界のミームとして取り上げられることが多い。でも、そのことを知っている日本人は少ないのではないだろうか。僕自身も、海外でいろんな政治家がこの少女について発言していたりするという事実に驚いた。でも、それと同じような感覚で、今、海の向こうで、アジアのカルチャーが世界中に浸透している事実を日本の中で感じる事はなかなかないのではないだろうか。でも、改めてYouTubeの日本で一番再生回数のある米津玄師と、韓国から世界で活躍するK-POPアイドルグループのBLACKPINKで比べてみるだけで、そのスケールの違いに驚かざるを得ない。隣にある決して広い国とは言えない国が、いかに世界を相手に成功を収めているかと思うと、もっと世界のことに目を向けるべきなのではないかなと思う。アジアにルーツを持つアーティストを中心に活動している88rising(※5)がアジアのアーティストをいっきに世界に押し上げていることに、同じアジア人として、もっとワクワクしていいのだ。

そんな88risingにフックアップされ、昨年SUMMER SONICにも出演したセン・モリモトがボロフェスタに出演してくれることも、僕としてはとてもワクワクする事だった。

88risingだけではなく、他のインディーシーンにおいてもアジアの各国は今注目の的だ。例えば韓国のHYUKOHやタイのPhum Viphuritなど、今まさにアジアが熱い。ボロフェスタには台湾からAcidy Peeping Tomが出演してくれるし、そんなアジアを舞台にツアーを行うシャムキャッツも出演してくれる。そして、トーク・イベント「アジア・インディー・ロック徹底研究」では、ゲストに音楽ライターの岡村詩野、シャムキャッツの菅原慎一を迎えてアジアのインディー・ロック・シーンについて解説してもらう。

https://borofesta.jp/post-3121/

こうして、3日間の僕なりの今面白いと思っている事ついて書いたが、他にも、やっぱり、主催バンドの一人であるメシアと人人があのステンドグラスのある夕焼けステージで演奏するのも楽しみだし、ボロフェスタでいつも何か起こしてくれるLimited Express(has gone?)、昨年出演し熱いライヴを見せてくれたMoccobondが散会し、ソロとして新たにスタートを切ったnishikekeも見どころだろう。そしてあの、熱気にあふれた街の底ステージは、主催バンド最若手のULTRA CUBで真っ向勝負な熱いライヴで始まり、ときめき☆ジャンボジャンボの、音が体の上から振ってくるような幸せな音楽で幕を閉じる。そんな主催バンドのライヴもボロフェスタで見逃せないポイントの一つだろう。


27日の深夜@MEATROではMETROならではのDos Monosやin the blue shirt、OUTATBEROなどクラブミュージックだけでなく、NOT WONKやTHE FULL TEENZなどのパンク、そして音楽の街、下北沢で音楽で人と人をつなげているライブハウスTHREEで活躍しているFEELIN’ FELOWS DJ’s、LEARNERS、そしてフードはスタンドかげんが出店する。そんな、いろいろな音楽が交わる中で、人と人も沢山交われるようなそんな光景が広がれば凄くいい。

気付けばすぐ、ボロフェスタ2019が始まる。

海の向こうでは、隣で撃たれた友達の、悲鳴を聞いている人がいる。
数年先の未来も見えずに、苦しんでいる人がいる。
今僕たちが住んでいる国でも、目の前にはいろんな見えない壁が立ちはだかっている。
そんな世界を変えたいとも思う。

でも、それと同じくらい、気分が乗らなくて一日中部屋の中で夏を過ごした人に、”来年は何かいいことがありそう”と思ってもらえるようなイベントでありたいとも思う。
そんなことを書きながら、窓の外の高層ビルに反射する無数の花火の音を思い浮かべて、部屋に残る、片付け忘れた夏の匂いを探してみる。
もう肌寒くなってしまったけれど、きっとKBSホールには熱い瞬間がまっている。
そんな瞬間に期待しながら、もうちょっとだけ夏を引き延ばそうと思う。

(※1)『W.W.D』メンバーの実体験をもとに作られたでんぱ組.incの自己紹介ソングにて、特大アンセムとなった曲
https://youtu.be/QddDPHoJOyA

(※2)BiSH、BiS、GANG PARADE、WAgg、avexと共同で運営しているEMPiREが所属する芸能事務所。

(※3) 静岡県出身のシンガーソングライター。10代アーティストのみで行われる未確認フェスティバル2018では審査員特別賞を受賞するなどの活躍をしていたが、Maitine Recordsよりリリースされたabelestとの楽曲(https://soundcloud.com/maltine-record/undou)、そしてでんぱ組.incへの楽曲提供で(https://youtu.be/zFAgG0HIvWo)その名を世に広く知らしめた。
10月4日には崎山蒼志と制作した楽曲「むげん・ (with 諭吉佳作/men)」を発表した。(https://youtu.be/2Hr5_pg6TGo)

(※4)気候変動に対する政府の無策に対してストライキを行った。国連気候行動サミットでのスピーチは大きな議論を呼び、世界の話題の中心となった。
WIRED:未来のための金曜日 ──グレタ・トゥーンべリ16歳、大人に「おとしまえ」を求めてストライキ:https://wired.jp/special/2019/greta-thunberg-climate-crisis

(※5)日系アメリカ人のSean Miyashiroが設立したアジアにルーツを持つのアーティストで構成されたレーベル。
【密着】88rising、世界を「アジア色」に染め上げる男たち
https://youtu.be/PsNlfXr_wX8

ボロフェスタ2019

日程

2019年10月25日(金)、26日(土)、27日(日)

時間・場所

■昼の部:京都KBSホール
10月25日(金) 17:00 開場 / 17:55 開演
10月26日(土) 11:00 開場 / 11:55 開演
10月27日(日) 11:00 開場 / 11:25 開演

■夜の部:京都CLUB METRO
10月26日(土) 21:30 開場 / 開演

HP

https://borofesta.jp/