天才メロディメーカー玉置浩二提供曲の世界

大人のJ-POPとは、TSUTAYAにおける「フォーク・ニューミュージック、歌謡曲、懐かしのアイドル」に分類されるカテゴリーをまとめた、山哲流のジャンル。
音楽がすべてだった世代の大人へ送る。

山哲
ハードロックから欅坂まで幅広く好み、業界33年の現在TSUTAYA音楽フィールドトレーナー。

~幻の楽曲を探してます編~

「オリジナル・ラブほどベスト盤がたくさん出されているアーティストっているんですかね?」

最近、田島氏のツイートが話題になったが、実は本人の意図しないベスト盤がメーカー都合で発売される事はよくあり、ドリカムや宇多田のようなアーティストでさえ自ら「そのベストは買わないで」と訴える過去も。

ちなみにオリジナル・ラブのベスト盤的なCDはTSUTAYA店頭に並んでいるだけでもざっと12種・・・。
そんなオリジナル・ラブ同様、ベスト盤が多種発売されていた安全地帯は最近デビュー35周年と「ALL TIME BESTブーム」にあやかってメーカー枠超えた収録や高音質化が嬉しい2枚組が発売された。

ヒットが多く、長年活躍するレジェンドの特権と苦悩であるが、ファンには嬉しいはず。同時にソロデビュー30周年を記念する玉置浩二のALL TIME BESTも発売された・・・。

1983年、大学生だった私がバイトしていたレコード屋は

ちょうどレコードからCDに急激に移行を始めた激動の時期で、店頭にはLPとカセットとCDが縦横無尽に展開されていた。

その頃安全地帯は、井上陽水のバックバンドという話題性、その縁で陽水の金字塔『氷の世界』をプロデュースした元モップスの星勝によるドラマチックなアレンジ、何よりも玉置の書く切ないメロディとボーカルで「ワインレッドの心」の年間売上2位という記録的大ヒットに加え、「恋の予感」という名曲もリリースし人気を不動のものとしていた。

とはいえ当時はまだJ-POPというコトバは無く、依然歌謡曲が主流で、松田聖子、中森明菜、チェッカーズなどがチャートを席捲していたのだが、アイドルの楽曲をアーティストが手がけることが日常的になり、玉置氏の元にも当然依頼が殺到したのである。

当時バイトの同僚だった上西くんは、玉置浩二楽曲に心酔しており…

今ではありえない時給で稼いだ給料の多くを「玉置関連」の音源収集に費やしていたが、おそらく依頼された案件全て受けていたのでは無いかと思うほどマイナーなアイドルにまで楽曲提供を連発していたので、アルバムに収録された1曲のためだけにLPを購入したり、全く興味のないアイドルのEPにも手を出していたが、それはそれで幸せそうだったし、その気持も理解できた。

玉置楽曲のマイナーな調べは、私も大好物だったのだ。そんな玉置氏が他のアーティストに提供した160曲以上に及ぶ楽曲の中でも、安全地帯の人気絶頂期だった80年代の作品に名曲が多いので、その天才ぶりを振り返りたい。

「ワインレッドの心」が世に出るほんの2ヶ月前に発売された

石川ひとみに提供した「恋」は、「まちぶせ」の大ヒットでブレイクしたものの、その後ヒット曲に恵まれなかった彼女の本格的歌謡路線を目指した楽曲。

残念ながらヒットはしなかったが、3年後に小柳ルミ子が歌詞もタイトルも変えてリメイクした方は結構話題になった記憶がある。名曲が必ずしも売れるわけではないが、こういったマニアックな楽曲への郷愁が大人のJ-POPの楽しみ方。
翌年、中森明菜に提供した「サザン・ウインド」は年間チャート10位に輝き、この曲以降15作連続でチャート1位を獲得する明菜の時代に突入するのだが、同年に発表したアルバム『ANNIVERSARY』のA面1曲目に収録された提供曲「アサイラム」もまた名曲なので外せない。

84年で忘れてはならないのが、8年ぶりのシングルを大ヒットさせた小林麻美の「雨音はショパンの調べ」に続く楽曲「哀しみのスパイ」である。ユーミンの詩に玉置節が炸裂したこの曲は、2012年に発売したセルフカバーアルバム『Offer Music Box』にも「サザン・ウインド」と共に収録され本人によるバージョンを聴くことが出来る。84年には太田貴子の「夏にあわてないで」と伊藤麻衣子の「優しい絆」にも触れずにはいられない。

太田貴子はスタ誕出身だがいきなり某アニメの声優&主題歌がヒットしたので、ある種独特のファンが付いてしまった。

その印象を払拭しようとリリースした曲で、作詞に来生えつ子、編曲に松原正樹という万全の布陣で作られた知る人ぞ知る名曲。

しかし彼女を支持していたファンの望む楽曲では無かったので全く売れなかった。
伊藤麻衣子はミスマガジンの初代グランプリ受賞を期に翌年歌手デビューしたアイドル。

明菜や小泉今日子がデビューしたいわゆる「花の82年組」に対し、彼女のデビューした83年は「不作の83年組」と呼ばれ多くのアイドルがデビューしたものの歌手として大成した人は皆無だった。その中で良質な楽曲をコンスタントに発表していた彼女には名曲が多く、「優しい絆」もその中の1曲として是非オススメしたい。

ミスマガジンといえば、この年3代目グランプリを獲得したのが斉藤由貴。

翌85年にデビュー曲「卒業」でいきなりブレイクした彼女の人気を不動のものにしたのはやはりドラマ「スケバン刑事」である。
そしてその主題歌である「白い炎」は玉置作品の中でも代表曲と呼べる名曲。同様に85年といえば奥田圭子である。氷室京介による神曲「プラスティック」を歌った事でBOOWYファンが騒いだ彼女のデビュー曲「夢ください―知・的・優・遊―」も玉置作品。

この2曲は玉置氏本人にセルフカバーして欲しいと30年思い続けている。翌86年には斉藤由貴に提供した「悲しみよこんにちは」がアニメ『めぞん一刻』オープニング主題歌として大ヒットしたのだが、実はこの年…

1枚のLPレコードが発売された。実写版映画『めぞん一刻』のサウンドトラックである。

この映画でヒロインの音無響子を演じたのが、後にお騒がせ女優と呼ばれ、玉置浩二と色々あった石原真理子なのだが、映画の挿入歌として彼女が歌う「想い・で」という曲がA面3曲目に収録されていて、これがとんでもなく良い曲なのだ。

そう、この曲の作曲も玉置浩二。しかも作詞は石原真理子本人。この年玉置氏は最初の妻と結婚したので、薬師丸ひろ子と再婚するのはまだ先の事。薬師丸ひろ子主演映画「翔んだカップル」出演が芸能界デビューの彼女がこの時既に玉置氏と関係が合ったことは両人も認めているが、そんな事よりこのアルバム…

CD化されておらず、音源が入手できない幻の楽曲。

当時は例の上西くんから音源を入手していたので、メロディはなんとなく憶えているのだが、30年の月日が脳内の音符を消去していっているのです。

誰か当時のLPかカセットをお持ちではないですか?連絡待ってます(笑)

最後に先日、元アイドル、そして女優だった川越美和が9年も前に亡くなっていたニュースにショックを受けた。彼女に提供した「夢だけ見てる」はドラマ『時間ですよ・平成元年』の挿入歌として89年にリリースされた名曲で玉置氏自身もセルフカバーしている。

その日、Twitterのタイムラインに彼女を偲ぶ多くの書き込みが流れたが、時は流れても名曲は永遠に心に刻まれる。

大人のJ-POP万歳!

2017.7 執筆