野猿ドラフト会議の全貌

大人のJ-POPとは、TSUTAYAにおける「フォーク・ニューミュージック、歌謡曲、懐かしのアイドル」に分類されるカテゴリーをまとめた、山哲流のジャンル。
音楽がすべてだった世代の大人へ送る。

山哲
ハードロックからAKBまで幅広く好み、業界31年のTSUTAYA音楽バイヤー。

「お前、今度フジテレビな~」上司にいきなり言われた意味分からない一言は18年前の冬。

「野猿(やえん)」というグループを憶えているだろうか?
TV「とんねるずのみなさんのおかげでした」の番組のスタッフで構成された音楽ユニットである。

その野猿の98年12月発売の3rdのシングル『SNOW BLIND』のキャンペーンをメンバー11人各々が、全国主要都市のレコード店で行うことになり、誰がどこの店鋪に行くのかを決めるために開催されたのが「野猿ドラフト会議」で、冒頭の上司の命令はコレに行って来いという意味。
当日お台場のCX社屋に集まった全国11店舗関係者はとりあえず弁当を渡され、いきなり本番の収録。エイベックスの松浦専務(現社長)の開会宣言で会議スタート。

指名はとんねるずの2人に集中するはずなので、重複覚悟で行くか、ボーカル担当の人気メンバー平山晃哉(テルリン)と神波憲人(カンちゃん)を抑えに行くか、という事だった。

キャンペーン時の売上も踏まえ、ここは勝負すべしと、1位は木梨憲武氏を指名。結果各店舗の指名はやはりカンちゃん、テルリンの単独指名に成功した2店舗以外は全店とんねるずに指名が集中。
タカさんに3店舗、ノリさんに何と6店舗の重複指名があり、クジによる抽選となった。緊張の中クジを引くもあえなく玉砕…

タカさんは渋谷のタワレコ、ノリさんは秋田の小さなレコード屋に決定。

クジを外した店舗は少しでも人気のメンバーに来てほしい。ということで2回目の指名で残っているメンバーの中でも人気の成井一浩(ナルナル)を指名するも、考えていることは皆同じなので5店舗が重複。がここでもクジで当たりを引けず玉砕。この時点で残るメンバーは4人。

3回目に指名したのは残った中でも一番イケメンの飯塚生臣(ジェリー)。が、またしても重複してしまい抽選に。

3度目の正直。そして玉砕。

ああ、何ということか。

3度の抽選を全て外し、誰にも一度も指名されず最後に残った一番人気のない網野高久(シュウ)が来ることに決定。呆然とする私に、フジの佐野アナは優しく「残念でした」と声をかけてくれ、当時AD(もしくはAP)だった松村匠氏(限、AKB48の事務所の映像プロデューサー)も「面白かったよ」と声をかけてくれたが、ヤバイ。

これ絶対社長に怒られる、視聴率20%のゴールデンの番組だぞ。
絶望感満載で東京を後に。運命の12・20、各地に指名されたメンバーが飛び、キャンペーンがスタート。

正直本当にお客さん来てくれるのか?一番人気無いメンバーだぞ?

でもそこは人気の野猿、不安をよそに200人を超えるお客様が。でもこの結果は残念ながら全店舗中最下位。1位はノリさん。

秋田の人口3万人の男鹿市の小さなレコード屋で用意したCD2,500枚は完売。

その結果が翌週の番組で放映されるも、何とここで奇跡が。最下位の罰ゲームとしてもう一度来てくれるという。
しかも連帯責任としてとんねるずを除く全員で!12・27、奇跡の大逆転で今度は2,000枚のCDを完売。3回の抽選を最後まで外しまくるも、「一番TVに写ってたから良かったやん」と言ってくださった今は亡き当時の社長に感謝。

「あの外しまくった奴、当然クビになったんだろうな」と2ちゃんねるに書き込んだ輩、ざまあ。

これが運命の野猿ドラフト会議の全貌である。ちなみに後でエイベックスさんに聞いた話だが、ドラフトの抽選、とんねるずの二人の結果はどうやら「ヤラセ」だったとか。

ノリさんも知らなかったようだが、どうりで大型チェーン店の中に1店舗だけ田舎の小さなレコード屋が参加していて、そこにまんまと指名されるわけだ。

さて、今回「大人のJ-POP」とは関係ない話だったが、野猿がその後、番組音声スタッフの女性新メンバーCA(荒井千佳)をメインボーカルに迎え2000年2月に発売した7枚目シングル『First impression』という曲、CAの哀愁のボーカルと後藤次利のメロディーが最高の名曲。

c/wの「泳げない魚」はCAとテルリンのデュエットで、これまた神がかった楽曲。

大人のJ-POP的にはこの2曲は特別枠・殿堂入り的なノリでオススメしたい。

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2016.08 執筆