大人で生臭くて、残虐だけど、それ以上に美しい童話「ゆれる人魚」を観てみた。

ポーランドのダークファンタジーのこの作品。一言で言えばアンデルセン童話の「人魚姫」をリアリティと艶めかしさ、影がある色に仕上げたミュージカル映画だ。「シェイプ・オブ・ウォーター」や「ヴァージン・スーサイズ」のような、美しく儚いテイストが好きなら、きっと魅了されてしまう作品だ。2015年製作のポーランド映画だが、現在TSUTAYAでも絶賛レンタル中。是非、潤いに渇望する暑い日々を送るこの夏に観てほしい。

簡単なあらすじはこんな感じ

舞台は、80年代風のワルシャワのナイトクラブ。ナイトクラブで演奏をしているミュージシャンらに地上に引き上げてもらい、姉“シルバー”・妹“ゴールデン”の初めてが沢山しかない世界が切り開かれる。ストリップやライヴ演奏を披露する大人の社交場で、美しい美貌を持つ彼女らは一夜でスターとなる。そんな中、姉のシルバーはベーシストの青年に恋をする。初めての恋を楽しむシルバーを妹のゴールデンは心中複雑な気持ちで静観する。しかし、彼女ら人魚にとって人間の男は捕食する対象でしかない…。シルバー、ゴールデンはそれぞれ地上に出てから感情の持ち方に方向性が行き違い、ぎくしゃくしてしまい、それぞれに段々と心が限界に近づいていく。

不思議な旋律の音楽が魅力的

ミュージカル映画なので、数々の楽曲が流れるのだが、心に残る。でもいい気分じゃない、なんだか不穏な空気を併せ持つ音楽たち。好きな青年を恋する対象、それとも“食べる”対象…生かしたいのに、本能は食べたい。そんな正反対の気持ちの中で心が不穏で不安定にゆれている肉食人魚の気持ちが耳に伝わってくる。ギターを使わず、シンセサイザーを主に使った楽曲達に心惹かれる。

人魚のビジュアルや、ナイトクラブの新旧東欧カルチャーが可愛いくて気持ち悪い

人魚の尻尾がとてもリアル。大きくて、でっかい魚のようで生々しい。全然、キレイな色でもなく、池に泳いでる魚のような地味な色で、生臭い匂いがしてきそうだ。ナイトクラブで生活して、段々とその場に馴染んで、何も知らなかった少女が酒を飲み、タバコを吸う姿もなんだか生々しい。
そんな彼女らの地上のメインの生活の場がナイトクラブなのだが、内装や80年代っぽくて可愛い色使いだ。色白な彼女らがキラキラした照明でさらに美しく映える。

胸がギュンとなる

もうキュンじゃなくて、ギュン。
元ネタのアンデルセン童話の「人魚姫」もそうだが、別の世界の人を好きになることによって、判断力がにぶり、自分自身を破滅させる道を選ぶのか、そうでないのか、そんな選択肢がいくつかあるのだが度々そこで胸がギュンとなる。心は純粋無垢な幼い思春期の女の子なんだと思うと、とても儚い。

そんなこんなで、新鋭の女性監督アグニェシュカ・スモチンスカが初めて手がけた大人なおとぎ話を是非観てほしい。心締めつけられるシーンが頭からも耳からも離れない。サントラが欲しい