歌手としてのリア・ディゾンをリマインドしてみた。

大人のJ-POPとは、TSUTAYAにおける「フォーク・ニューミュージック、歌謡曲、懐かしのアイドル」に分類されるカテゴリーをまとめた、山哲流のジャンル。
音楽がすべてだった世代の大人へ送る。

山哲
ハードロックから欅坂まで幅広く好み、業界33年の現在TSUTAYA音楽フィールドトレーナー。

「黒船、再来!」

少し前、街中で目にしたキャッチコピー。
ふと気になって調べてみると、某人気週刊誌が「リア・ディゾン超えの逸材」という触れ込みの新人グラビアアイドルを表紙&巻頭グラビアに抜擢したという記事が大量に現れた。
別にリア・ディゾンが復活したわけではないのかと、小さなため息をついたついでに、今彼女は何をしているのか気になって「リア・ディゾン 今」と検索を続けてみたら、なんということか、昨年同じ雑誌に8年ぶりに一度だけグラビアで復活していたことを知った。

「ポイしないでください」
人気絶頂だった2008年、結婚・妊娠を同時に電撃発表した会見で発言した有名なコトバ。わずか2年で日本を席捲し、そして去っていった彼女の存在は、「YouTube」や「ニコ生」がサービスを開始し「iPhone」が発売された当時のまさに時代の寵児だった。
歴史的には、ペリー率いる黒船来航以降明治維新までを「幕末」と呼ぶそうだが、グラビア界の黒船がやって来た頃を期に国内はスマホの時代に突入するのである。

グラビアアイドルの枠を超え、タレントとしてTV露出が増えていた2007年2月、歌手としてもデビューする。
芸能界ではありがちな、人気タレントだから無理やり歌手デビューさせちゃうパターンと言えばそれまでなのだが、元々目指していただけあって、それなりに歌える力量があったことや、デビュー曲をあえて派手なイメージを避けたことが好印象を与えた。オリコン最高位7位を記録したデビュー曲「Softly」は、タイトルからも想像出来るメロウでゆったりしたナンバー。「全てがやわらかさにあふれていて・・・」から始まるこの作詞を担当した『岡嶋かな多』は当時作家としてはまだ駆け出しで、バンド活動をしながらSHIBUYA TSUTAYAのスタッフとしても働いていたと記憶するが、その後安室奈美恵、E-girls、嵐、SMAPなどを手がける人気作家として現在も活躍中である。

この年シングルを3枚リリースし、NHK紅白歌合戦にも出場するのだから、今更ながら当時の人気の凄さを実感するが、同じくその年の9月に発売された1stアルバム「Destiny Line」の9曲目に意外なナンバーが収録されていたことが、個人的には「歌手・リア・ディゾン」のステイタスを大きくジャンプアップさせた。その曲とはあのカルチャークラブの「Time (Clock Of The Heart)」のカバーである。カルチャークラブは言うまでもなく1980年代に『デュラン・デュラン』らとともに「ニューロマンティック」ブームを巻き起こしたボーイ・ジョージ率いる英国のグループ。「君は完璧さ」や「カーマは気まぐれ」の大ヒットで日本でも子供たちすら「カマカマカマカマ」と口ずさむほどのブームだった。リアがカバーした「Time」は「ミス・ミー・ブラインド」と共にボーイ・ジョージのスタイル先行人気にとらわれない音楽的評価を高めた名曲中の名曲である。それくらいこの曲のカバーは秀逸で、特にアレンジに奇をてらわずオリジナルに忠実に再現した事が評価出来た。「Time」がリリースされた1982年に彼女はまだ生まれていない(1986年生まれ)ので、何故この曲をカバーしたのかは不思議に思っていたが、最近知った当時のインタビューによると、元々好きな曲だったらしく、カバーを1曲何かやろうというアイデアを貰った時に本人が迷わずチョイスしたという事実を知って「スタッフに切れ者がいるな」から「ヤルな、リア・ディゾン」に認識が変わるとともに、ますますこの曲が特別な1曲になった。

とはいえこのカバー、世間的には全く認知・評価されず、私が知る限り公でこの事が語られたのは、2013年放映された15分番組の深夜ドラマ「女子高警察」の第2話で、出演のリリー・フランキー氏が「えっ、リア・ディゾン知らない?黒船。ミニ情報としてはカルチャークラブの名曲TIMEをカバーしたりもしてるんだよ」というセリフを言ったことくらいである。このセリフ自体、ドラマの脚本家『ブラジリィー・アン・山田』が書いたものか、それともリリー・フランキー氏のアドリブだったのかは判らないが、その数秒のセリフに自分と同じマインドを持った人がいることに感動したものだ。リア・ディゾンが活躍した10年前のわずか2年も、カルチャークラブがヒット曲を連発し世界中を席巻した約30年前の1983~4年の2年間も自分の中ではそんなに違いは無い感覚に思うのは、オリジナルの「Time」とカバーの「Time」がどちらも色褪せることが無い名曲だからだろうかと、改めて聴き比べてみた今日8月6日は、野球界の黒船と呼ばれ、ヤクルトスワローズ在籍2年間でホームランを連発したあの『ボブ・ホーナー』の60歳の誕生日でした。

大人のJ-POP万歳。

2017.8 執筆