何故AKBに大人がハマるのか?~若き天才作曲家達の存在

大人のJ-POPとは、TSUTAYAにおける「フォーク・ニューミュージック、歌謡曲、懐かしのアイドル」に分類されるカテゴリーをまとめた、山哲流のジャンル。
音楽がすべてだった世代の大人へ送る。

山哲
ハードロックからAKBまで幅広く好み、業界31年のTSUTAYA音楽バイヤー。

日本国民の67%がAKBに興味なし

…という調査結果を某機関が発表してから、「AKBはもう国民的アイドルグループではなくなった」というワードを目にすることが多くなったのだが、裏を返せば国民の3割が興味を持っている事の方が異常である。

アイドルは短命がゆえ、双方が年齢を重ねればその関係は精算され、いずれ青春の想い出となるモノ。
松田聖子のようなカリスマか、モーニング娘。のように「名前はそのままで中身が入れ替わり続ける集団」を除いて。

結成10周年を迎えたAKBは後者のパターンであるが、人気・知名度のあったメンバーの相次ぐ卒業が、冒頭の調査結果と関係しているのかもしれない。
CDが売れない時代にミリオンセラーを(現時点で)27作連続記録中にもかかわらず、一般的には「ヘビロテ」「恋チュン」「会いたかった」「365日の紙飛行機」くらいしか知られていない事実はあるが、大ヒット曲を3曲以上持つという事が、J-POP史に名前を残す存在であることもまた事実。

その連続ミリオンを構築する完成されたシステムの主役は…

他ならぬ「ヲタ」と呼ばれる勇者達なのだが、この熱心なファンこそ「大人」が多い。
大手生命保険会社の調査で、今年の総選挙で指原莉乃が1位になった事を、40~50代は7割以上、60代で5割以上が知っていたと発表。

何故AKBは大人に支持されているのか?

韓流ブームは一定の世代がベタな昼メロドラマ的展開に自分の若かりし頃をダブらせたように、昔おニャン子にハマった10~20代が今40~50代なわけで、集団の中で「自分は誰が好き」という習性、いわゆる「推しメン」とういうシステムを30年前に確立させた秋元康氏に今でもコントロールされているようで正直怖いが、先日招待して頂いた「じゃんけん大会」というイベントの関係者席で自分の目の前を往復した秋元康氏の「何重ものオーラに包まれている感」はもっと怖かった(笑)

筆者は長く業界で仕事をしているので色々な人に会う機会が多いが、30年前にソロデビューコンベンションで…

福永恵規(おニャン子クラブ)に会えて握手した時の感動を忘れることが出来ない。

AKBの代名詞である握手会は未経験だが、招待ライブ後の挨拶でメンバーとほんの少し話しただけで魂を持っていかれそうになるので(笑)
握手会の中毒性は大人がハマるのも頷ける。

もちろんそれは魅力的な要因だが、それとは別に「楽曲」による効果が大きいと考えている。

ご存知のように、AKB48を始めとした48グループ(SKE48、NMB48、HKT48、NGT48含む、以後48G)と、公式ライバルとして誕生し今や本家AKBを凌ぐ人気の乃木坂46とその妹分としてデビューした欅坂46の坂道グループ(以後坂道G)の楽曲は、プロデューサー秋元康氏が99.9%作詞をしているのだが、作曲に関してはごく一部例外を除き、殆どが一般には馴染みのない名前が並ぶ。48Gでは楽曲作成のため、100曲以上のデモから選ばれた1曲に詞を付ける(いわゆる曲先という手法)と言われていて、今はグループも増え、次々にリリースされるシングルには、数種類のタイプをリリースするので、c/w曲を入れると、通常のアルバムに近い楽曲が必要となり、大量のデモの中から選ばれし良曲が浮上する確率も高いはず。

解散が決まったSMAPはCDデビューから25年の間に55枚のシングルと28枚をのアルバムをリリースしているが、総楽曲数は400曲くらいなのに対し、48Gの楽曲は10年で軽く1,000曲を超えているので、個人的な嗜好でも3枚組のベスト盤は楽に作れるほど楽曲クオリティは高い。

ただ、ファンにしか知られていないのである。
それはシングル表題曲が全てではないということ。以前は全く無名の作家の作品がいきなり選ばれる事もあったが(これ、印税契約って??)グループのコンセプトや楽曲の方向性が長年の傾向から固まってきたので、最近は採用される作家達のラインナップがお馴染みになってきた。

この作家達こそSKK47(作曲家47)と呼ばれ、彼らの創り出すメロディがやたら大人の琴線に触れるのである。

前置きが長くなったが、AKB楽曲に携わる天才達の何人かを紹介することで大人の鑑賞に耐えうる楽曲の秘密を解明したい。

コスミック・インベンションというグループを憶えているか?

1980年12月、YMOの日本武道館公演の前座に突如として現れた中学生によるYMOのコピーバンドである。
誰かやるだろうなと思っていたら同世代にやられた嫉妬感がさらに衝撃に拍車をかけた記憶がある。

「コンピューターおばあちゃん」というNHK「みんなのうた」で著名な楽曲でTVにも出ていたので、知っている人もいるだろう。わずか2年の活動で解散したこのグループでメインキーボード奏者だった井上能征こそ、創設時からAKB48楽曲の作家陣の中で、最も多くの曲を手掛け、なおかつヒットさせている男「井上ヨシマサ」である。

80年代にYMOやアイドルを聴いて育った現在の大人が、YMOチルドレンと呼ばれ、小泉今日子や中山美穂の楽曲を手がけてきた彼の楽曲にシンパシーを感じない理由がない。彼なりの「歌謡曲」がAKB楽曲に根付いているのである。

また、初期のAKB楽曲を語る上で外せない作家が存在する。

その名は岡田実音(おかだ みお)

彼女の楽曲はそんなに多くはないが、「あっ、このメロディー好き」と思って調べてみるとだいたい彼女の曲だったという感じで名曲が多い。
そんなことからファンの間では「岡田マジック」と賞賛されていた。

現在楽曲提供は殆どしていないが、「ゆず」や「ももクロ」のボイストレーナーとしての活躍が知られている。さて、今年のNHK紅白では48GからはAKB48だけが出場するのだが、何と坂道Gの乃木坂と欅坂は揃って出場する。
坂道Gの躍進は冒頭のAKBG世代交代からの人気の陰りに伴うものではあるのだが、ファンの間ではこう呟かれている「何故、秋元康は最近坂道Gにばかり神曲を提供するのか・・・」と。

確かにメロディとアレンジの秀逸な楽曲が多い。

メーカーのコンセプトや想いもあるだろうが、例えば鮮烈なデビューだった欅坂の「サイレントマジョリティー」を作曲したユニット「バグベア」や乃木坂の「気づいたら片想い」を作曲したAkira Sunsetなど両Gにまたがり名曲を量産する若き天才達の躍進は、時代は違えど筒美京平氏などの偉大なる作曲家達が全てだった昭和歌謡の洗礼を受けた今の大人達の感性に何故か染みるのである。

その象徴的な存在として、一人の若き作曲家が意外なところからクローズアップされる事件が起こった。

ミスチル桜井和寿が武道館でのイベントライブで乃木坂の曲をカバーしたのである。

Bank Bandで影響を受けたアーティストの楽曲をカバーする事も多い桜井氏だが、アイドルの、しかもリリースされたばかりのアルバム収録曲で、シングルカットされていない曲をカバーするなんて前代未聞と乃木坂メンバーはおろかファンが歓喜。

またミスチルファンからも支持され、一体誰の作品なのか?と騒然となった。この曲「きっかけ」を作曲したのは、嵐やAKBにも楽曲提供している杉山勝彦。あの前田敦子の卒業ソング「夢の河」の作者でもあるが、何と言っても乃木坂の歴史を変えたと言われる「制服のマネキン」や紅白でも歌唱した代表曲「君の名は希望」の作者といえば納得である。

氏の作品である乃木坂の最新シングル「サヨナラの意味」は乃木坂初のミリオンヒット。AKB以外でシングルがミリオンセラーになったのは、秋川雅史『千の風になって』以来、実に9年ぶりの快挙である。本人も「もっと年長者が作っていると思っていたと他の作家さんに言われる」とつぶやいていたが、彼のメロディは大人を魅了する「大人のJ-POP」そのものである。

一度挨拶する機会があり、その時に(AKBに提供した)「あの日の風鈴」という楽曲が大好きだと打ち明けた。

この楽曲、何年か前のAKB総選挙で一度も名前を呼ばれなかった総勢171名で歌唱されたファンでさえあまり知らない存在なのだが、案の定、ご本人には「マニアックですね」と笑われた。

そのコトバ、大人のJ-POPER(造語)には褒め言葉だけどね。

もしこの曲を例えば平井堅がカバーしたら大ヒットすると思うので一度聴いてみてほしい。何故AKBに大人がハマるのか、その答えの全てがこの曲にはあると思うから。

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大人のJ-POP万歳!

2016.11 執筆